Lets go to the Movie Theater 6月号『アクトレス女たちの舞台』『仕立て屋の恋』

 

スクリーン2アクトレス 〜女たちの舞台〜』(2014

 

上映期間:528日(土)〜610日(金)


 

 一雨ごとに緑が深くなる季節、今月はしっとりとした大人の映画を2作品ご紹介。まずは現在上映中の華麗なる女優たちの競演が話題の映画『アクトレス~女たちの舞台~』。主演のマリア役に世界三大映画祭であるヴェネツィア、ベルリン、カンヌで女優賞を獲得した女優ジュリエット・ビノシュが挑む。

 物語は、大女優マリアのもとに彼女の出世作である舞台劇『マローヤのへび』の再出演の依頼が舞い込む。しかし、オファーされた役は、かつて彼女が演じた小悪魔的な娘シグリッド役ではない。ジグリッドに翻弄されて破滅へと追い込まれる中年女性ヘレナ役だった。マリアは若い女性アシスタントのヴァレンティンと2人、スイスの山荘にこもって役作りに臨むが

 女優がテーマになった名作といえば、新人女優の野心と世代交代を描いた『イブの総て』、往年の栄光に取り憑かれた大女優の悲劇を描いた『サンセット大通り』などが思い起こされるが、今作は女優マリアを通して、単に女優の栄光と衰退を描くのではなく、マリアの葛藤を通じて誰もに平等に訪れる老いと人間の成熟をオリヴィエ・アサイヤス監督が描く。シャネルの全面協力を得たメイクや衣装も見所。

 

【キネマ旬報ベスト・テン1990年代特集】

スクリーン3『仕立て屋の恋』(1989

 

上映期間:6月4日(土)~610 日(金)


 

 もう一作品は、恋愛映画の巨匠パトリス・ルコント監督の『仕立て屋の恋』。『髪結いの亭主』の前年に手掛けた作品である。

 パリに住む主人公のイールはユダヤ人移民の仕立て屋。過去の犯罪歴のせいか友人もおらず、周囲から差別的な目で見られている。だが、そんな彼には密かな愉しみがあった。それはブラームスを聴きながら、向かいの家に住むアリスを窓から覗くことだ。そんなイールは、殺人事件の容疑者の疑いがかけられてしまう

 刑事や近隣からの疑いの視線は、第二次大戦でフランスでも起きたユダヤ人迫害を想起させる。物語の終末、イールとアリスの視線の交差が印象に残る。恋愛映画の名作として知られるのだが、その背後には、昨今、欧州で見られる移民問題に通じた描写が見え隠れする。フランスの2人の巨匠監督による大人の映画をどうぞお見逃しなく!(出町光識)

【 朝日まつど新聞6月号掲載】