でま子の“シネマ探訪” 〜その①「俯瞰ショット」

 映画鑑賞にも「物語(ストーリー)を楽しむ派」と、「映像を楽しむ派」がいらっしゃいますね。今回は映像を効果的に使った表現についてお話したいと思います。「俯瞰ショット」という撮影方法があります。俯瞰ショットとは「高い所から見下ろした視点」のことです。

 現在上映中の映画、『好きにならずにいられない』では、ファーストシーンの空港を俯瞰ショットで撮影しています。実はこのファーストシーンが、主人公の「まなざし」と深く関わりがあります。

 この映画の主人公は、43歳の童貞フーシ。空港で荷物の運搬係をしています。彼の趣味は、ジオラマ作りとラジコン遊び。巨漢のフーシが小さな玩具で遊ぶ姿は、まるで北欧民話に登場する巨大妖精トロルのよう。大きな身体で自分だけの「小さな世界」作りに夢中な「子ども」のような男性です。

 そんなフーシが、ある日“花屋”の女性シェヴンに恋をして…。

 映画のラストシーンで、空港にいるフーシは機内に向います。今まで、自分が作りあげた「小さな世界」を見下ろしていた彼が、シェヴンとの恋を経て、現実を見下ろす「まなざし」を得たことを暗示させています。

(キネマ旬報シアター9月号上映ガイドから)