でま子の“キネマ探訪”その③「赤色のイメージ」

現在では当たり前のようになったカラー映画。今回は「色彩」テーマに、香港映画界の名匠ピーター・チャン監督の『最愛の子』をご紹介します。 

 

スクリーン2にて、2016年11月5日〜18日上映

 

ピーター・チャン監督

製作国:香港=中国


 現在では当たり前のようになったカラー映画。今回は「色彩」テーマに、香港映画界の名匠ピーター・チャン監督の『最愛の子』をご紹介します。  

 この映画は、離婚した両親の最愛のひとり息子ポンポンが、ある日行方不明になってしまうところから始まります。チャン監督が、偶然観ていた児童誘拐の報道番組がきっかけで、実話をもとに描かれた作品。

 

 中国では公表されているだけで、年間1万人の子どもたちが行方不明となり、累計およそ20万人にも及ぶ子どもが誘拐されているといわれます。この背景には、中国の急激な経済発展にともない生じた格差の構造が根底にあり、映画でも地域、民族、学歴、職業などの様々な格差を描いていきます。

 

 香港映画を代表するチャン監督。香港映画の特徴にはどのようなものがあるでしょうか。ジャッキー・チェンやカンフーアクションという声はすぐに思いつきそうですね。実は他にいくつか挙げることが出来ます。

 例えば、込み入った路地や狭い室内、逃走した際には必ず市場や食べ物、食堂が出てきます。また、建物の屋上を逃げて走り、そこから飛び降りのも香港映画には欠かせない特徴といえます。『最愛の子』の中でも、その特徴的なシーンはいくつか登場しています。ぜひ探してみて下さい。

 

 さて、今回のテーマである、「色彩」に注目してみましょう。この映画では、「赤色」が各所に散りばめられ、繰り返し登場します。「赤」に対する、監督のこだわりを感じさせます。

 冒頭の深圳に暮らす父親ティエンの赤いポロシャツに始まり、電線の目印の赤い紐、母親の自動車を追っていく少年ポンポンの後方にある赤い紐や、ポンポンの赤い靴赤い風船…など、枚挙にいとまがありません。

 「赤色」は、「愛情、勇気、勝利」を意味する一方、「危険、緊張、怒り、争い」を暗示します。中国では、国旗の地色「赤色」は、革命を意味します。

 中国の社会問題に向き合い、当局との交渉に苦労した末で『最愛の子』を完成させたチャン監督は、どのような意味で「赤色」を使用したのか。そのような点に考えを巡らせるのも、観客の楽しみではないでしょうか。