『最愛の子』『ぼくらの家路』

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『最愛の子』

 

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今月は、もの思う秋に相応しい子どもをテーマにした映画を2作品ご紹介します。

1本目の作品は、中国で起きた幼児誘拐事件を題材に描いた『最愛の子』。香港の名匠ピーター・チャン監督が、偶然に目にしたテレビ報道をきっかけに作品化したもので、息子を誘拐された両親と、誘拐してきた子とは知らず育てた母親を対比させて描いた衝撃作です。

 

深圳の下町でネットカフェを経営するティエンは、妻と別れ最愛の息子ポンポンと二人暮らし。ある日、母親の車をみかけたポンポン。その車を追って行ったことがきっかけとなり、誘拐されてしまいます。ティエンは必死にポンポンを探します。何人もの人に騙され、時に命の危険にさらされながら、来る日も来る日も、息子のわずかな手掛かり辿っていき、そして3年後、ようやく有力な情報を得て、再会を果たすのですが…。

 

中国では年間約1万人の子どもが行方不明になっており、その事件の背景には、近年まで実施されていた一人っ子政策や、急激な経済発展、そして地域、学歴、職業がもたらす格差問題があげられます。チャン監督は、これらを踏まえ現在の中国が抱える問題を丁寧に描かれています。映画の中で、「赤」が象徴的に使われます。赤い糸で引かれあう親子の絆を表しているかのようです。

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『ぼくらの家路』

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2本目の作品は、10歳の少年ジャックが、母親を捜しベルリンの街をさまよう姿とその成長を描いた『ぼくらの家路』。

ジャックは、6歳の弟のマヌエルとシングルマザーの母親と3人で暮らし。しかし、若い母は、息子たちよりも恋人との時間や夜遊びを優先してしまう。ある事件をきっかに、施設に独り預けられたジャック。ひたすら母親との再会を待ち続けます。ようやく夏休みが訪れて、自宅への外泊が許されたその当日になって、母から電話があり、迎えが3日後になると告げられる…。

 

作品の原題が、『JACK』と示さすように、1人の少年に焦点をあてその成長を見つめた作品。ジャックが毎日おこなう手慣れた食事の準備や、弟への献身的な世話が、けな気だが痛々しくもあります。作品タイトルは、始めと終わりに2度映し出されます。それを見た時のアナタの心境の変化に何か気が付かれるはず。また、双眼鏡にまつわるエピソードとジャックが決心する歯磨きショットは必見です。ぜひお見逃しなく!出町光識

(朝日まつど新聞2016年11月1日号から)