キネマ旬報シアター2017年2月上映ガイド

でま子の“キネマ探訪”   その⑥「邦画は二極化?」

 2016年に、当劇場や他館で上映された映画のうちで、あなたは何本の日本映画をご覧になりましたか。昨年は、邦画の豊作の年と言われ、新解釈のリメイク版『シン・ゴジラ』、歴代興行成績爆進中の『君の名は。』、絶賛の名作と名高い『この世界の片隅に』と、どの作品を挙げても記憶と記録に残る映画ばかりです。

 現在、年間に公開され映画は約1000本。そのうち半分が邦画。

AERA」(2017129日合併増大号)特集「日本映画の決断」に掲載されていた、「5つの決断で日本映画は絶頂へ」の記事の中で、日本映画はインディーズ映画と大作映画とで「極化した」と発言がありました。個人的には、映画は二極化ではなく、“映画は多極化している”のではないかと感じています。

いわゆる映画会社が、敏腕プロデューサーのもと、広告、宣伝をして大ヒット作になる大作作品は、多くの皆さんの目や耳のも止まるでしょう。また、著名な監督の作品を、海外の多数の映画祭で出品し、受賞を宣伝の代わりにして、国内で興行していく作品も多くみられます。

一方で、片渕須直監督の世界観に共感したスタッフが制作し、クラウドファンディング(応援する人々、観客も含む)の支援をもと生まれる作品も、昨年は大きな結果を残しました。

また、次世代の若手や新人監督も意欲的で実力派揃いが目立ちます。『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督は、地道な活動して花開き、『ローリング』の冨永昌敬監督は、ユニークな作品で定評、『築地ワンダーランド』の遠藤尚太郎監督は、今の東京をドキュメンタリーに撮り、『14の夜』の足立紳監督は、実力脚本家からデビュー、『At the terrace テラスにて』の山内ケンジ監督は演劇界から映画界に進出し、『プールサイドマン』の渡辺紘文監督は、大田原から地方発信に孤軍奮闘するなど、各自がそれぞれの足元から映画にアプローチを見せています。

昨年11月に公開以降、ヒットし続けている『この世界の片隅に』。この作品は、製作、宣伝方法のみならず、いわゆる「近代」以降、映画が描き続けた対比構造(善悪、国家と個人、占領国と植民地、など)からも脱した映画と言えるでしょう。作品内部では多様性を描き、そして作り手と観客が共に観たい映画を作るという姿勢。2016年は、多様性を育み作るという時代の幕開けだったと総括したいですね。